女性管理職へのメンタリング|キャリア支援と管理職としての成長をつなぐ

女性管理職へのメンタリングでは、キャリアの相談だけでなく、周囲からの期待と自分自身の希望を整理し、管理職としての成長につなげていくことが大切です。
女性として働く中で受けてきた影響と、一人ひとり異なる管理職としての課題。その両方をどのように支援すればよいのか、よくある質問とあわせて解説します。
女性管理職へのメンタリングというと、「女性の先輩にキャリアの相談をする」「ロールモデルから経験を聞く」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。もちろん、それもメンタリングの役割の一つです。
一方、管理職になった後には、チームをどう動かすか、メンバーをどう育てるか、自分はどのような管理職になりたいのかといった新しい課題が生まれます。
だからこそ、女性管理職へのメンタリングでは、女性として働く中で受けてきた影響を整理することと、一人の管理職としての成長を支援することの両方が重要です。
目次
女性管理職には、女性ならではの支援が必要なこともある

女性管理職を「女性だから」と一括りにすることはできません。
それでも、女性が働いてきた環境や現在置かれている状況を考えると、支援において無視できないことがあります。
職場には、「重要な仕事は女性に任せにくい」「女性は家庭を優先する」「子育て中の女性が管理職の責任を担うのは難しい」といった、性別や家庭状況に基づく思い込みが存在する場合があります。
厚生労働省も、女性社員の配置・育成・昇進などに影響するアンコンシャス・バイアスとして、「重要な取引先への営業は女性には任せにくい」「女性は家庭優先」「子育て中の女性に管理職の重責は難しい」といった例を示しています。(参考:厚生労働省令和8年度民間企業における女性活躍推進事業)
また、出産や育児、介護、家庭内での家事分担などを考えながら、同時に仕事で責任を担っている女性もいます。
管理職になって初めて、自分以外の管理職の多くが男性という環境に入る人もいるでしょう。厚生労働省が紹介する企業事例でも、女性管理職がまだ少なく、悩みや困りごとを気軽に相談できる相手が少ないことを背景に、新任女性管理職向けのメンター制度を導入したケースがあります。
その中で、「どのように振る舞えばよいのだろう」「周囲が期待する女性管理職像に応えた方がよいのだろうか」「家庭も大切にしながら、仕事とどう向き合えばよいのだろう」といった迷いが生まれることがあります。
課題を本人の自信や能力だけの問題にせず、本人を取り巻く環境や役割期待も含めて捉えることが、女性管理職へのメンタリングの出発点です。
周囲の期待と「自分はどうしたいのか」を分けて考える

女性管理職へのメンタリングで大切にしたいことの一つが、一度、自分自身の希望を確認することです。
長く置かれてきた環境や周囲からの期待は、本人の考え方にも影響します。
たとえば、「管理職になったから、もっと強く振る舞わなければならない」「家庭に負担をかけてはいけない」「周囲の女性社員のお手本にならなければならない」と考えているかもしれません。
しかし、それが本人の望んでいることとは限りません。
メンタリングでは、すぐに答えを出そうとせず、次のような問いを通じて本人を起点に考えます。
私は何を大切にしたいのか
どのような管理職になりたいのか
仕事と生活をどのようにしていきたいのか
この立場で何を実現したいのか
周囲から向けられる期待と自分自身の意思を一度分けてみることで、これからのキャリアや管理職としてのあり方を、自分で選びやすくなります。
女性特有の悩みだけでなく、管理職としての課題も扱う

女性管理職へのメンタリングを、女性特有の悩みだけに限定する必要はありません。
管理職になれば、一人の管理職として向き合う課題があります。
自分で仕事を抱えてしまう。メンバーにうまく任せられない。チームの方向性を示せない。部下との1on1がうまくいかない。プレイヤーとして成果を出していたときとは異なり、手応えを感じられない。
課題は一人ひとり異なります。
こうした課題まで「女性だから」と捉えてしまうと、本来向き合うべき成長課題が見えにくくなることがあります。
必要なのは、
1)女性として置かれてきた環境や役割期待を見ることと、
2)一人の管理職としてどこでつまずいているのかを見ること
この二つを分けながら、必要に応じて関連づけて考えます。
女性管理職へのメンタリングでは何をするのか
管理職育成としてメンタリングを行う場合、最初から一つの答えや理想の管理職像を示すのではなく、本人と組織の状況を見立てることから始めます。
そのうえで、本人の強みや価値観、管理職として求められる役割を整理し、現場で試す行動へつなげます。
相談テーマは、役割転換、部下育成、任せ方、フィードバック、評価、1on1、チームの方向づけ、上司や他部門との関係、意思決定、キャリア、仕事と生活、強みや価値観などさまざまです。
経験と強みを管理職の役割に結びつける
これまで培った経験や強みを振り返り、管理職として期待される役割との接点を整理します。
不足している点だけを見るのではなく、すでに持っている強みをどのようにマネジメントで生かせるかを考えます。
自分なりのリーダーシップをつくっていくためにも大切な視点です。
キャリアを中長期で捉える
目の前の役職への適応だけでなく、今後担いたい仕事や、どのような価値を生み出したいのかについて考えます。
組織からの期待と本人の希望を分けたうえですり合わせ、女性管理職のキャリアを一つの道に限定せず考えていきます。
管理職としての実務課題を扱う
任せ方、部下育成、フィードバック、評価、1on1、チームの方向づけ、上司や他部門の巻き込み、意思決定など、実際の職場で直面している課題を扱います。
「管理職としてどうあるべきか」という抽象的な話だけではなく、今起きていることを具体的に見ていきます。
対話を次の行動に変える
気づきを得ても、現場で試さなければ管理職としての変化にはつながりにくいものです。
次回までに試す行動を具体化し、実際に現場で取り組みます。
そして、その結果をメンターとの対話で振り返り、次の行動を調整します。
社内メンターと社外メンターの違い

社内メンターは、組織文化や制度、意思決定の流れを理解しており、社内での人脈形成や具体的な経験談を提供しやすい点が特徴です。
厚生労働省が紹介する事例では、新任女性管理職に対して他部署の部長クラスをメンターとし、直属の上司とは異なる「斜めの関係」で相談できるようにしている企業もあります。
一方、直属の上司や所属部署との関係、社内評価などを意識して、本音を話しにくくなる場合もあります。
女性管理職の社外メンターは、評価や社内の利害関係から距離を置いて対話できることが特徴です。
自社では当たり前になっている考え方を一度外から見たり、異なる組織の経験や価値観に触れたりすることもできます。
ただし、社外メンターは社内の制度や暗黙知をすべて理解しているわけではありません。
そのため、法人で導入する場合は、人事や上司が組織として期待することと、本人がメンタリングで扱うことを適切に整理する必要があります。
どちらか一方に限定せず、目的によって組み合わせることもできます。
社内メンターが組織内の接点や機会をつくり、社外メンターが本人の内省や管理職としての現場実践を支援する、といった設計です。
厚生労働省も、女性活躍推進におけるメンター制度では、企業が抱える課題や目的に応じて、対象者やメンターを設定することを示しています。
女性管理職向けメンター制度を設計するポイント
育成課題・対象者・目的を先に定める
新任管理職の役割適応を支えるのか、次世代候補のキャリア形成を支援するのか、既任管理職が次の成長課題に向き合うのかによって、必要な支援は変わります。
サービスや制度を先に決めるのではなく、「誰に、どのような育成課題があり、何を実現したいのか」を整理します。
厚生労働省のメンター制度導入マニュアルでも、育児中の女性社員、管理職候補者、課長・部長・役員候補者など、課題や目的によって対象者を分けて考える例が示されています。

女性管理職を一括りにしない
同じ役職や年代でも、これまでの経験、強み、生活環境、本人が目指すキャリアは異なります。
女性管理職に共通して起こりやすい環境上の課題を踏まえながらも、一人ひとりの管理職としての課題を見立てられる設計が必要です。
選定とマッチングの基準を明らかにする
「女性には女性メンター」と性別だけで決めるのではなく、管理職経験、対話力、相談テーマとの相性などを確認します。
本人がどのような相手と話したいのかも重要です。
必要に応じて、途中でメンターを変更できる仕組みを用意しておく方法もあります。
守秘義務と人事への共有範囲を決める
メンタリングでは、本人が安心して話せることが重要です。
面談内容をどこまで人事や上司へ共有するのか、開始前に明確にしておきます。
個別の発言内容ではなく、本人の同意を得たうえで、育成テーマや会社側に必要な支援を共有する方法もあります。
昇進者数だけで成果を測らない
女性管理職育成の最終的な成果の一つとして、登用や昇進を見ることはできます。
一方、メンタリング期間中には、管理職としての役割認識、現場での行動、上司との対話、挑戦機会などの変化も起きます。
本人が何を実践し、どのような変化が起きたのかを継続して確認することが大切です。
対話を現場での成長につなげる伴走の進め方
メンタリングを管理職としての成長につなげるには、対話の質だけでなく、現場実践を支える型が必要です。Good Teamのメンタリングでは、本人と組織の状況を見立て、管理職に求められる役割を具体化したうえで、本人の強みを生かせる行動を決め、実践と振り返りを繰り返し経験学習を回していきます。
見立てる:本人の課題、強み、職場環境、組織からの期待を整理する
役割を定める:管理職役割12ステップなどの型を用い、優先する役割を選ぶ
行動を決める:次の会議や1on1など現場実践に向け具体的な行動に落とす
実践する:現場で試し、相手の反応や自分の変化を記録する
振り返る:結果を検証し、次の行動を調整する

この過程で、メンターとの対話で得た気づき・学びを日常のマネジメントに接続します。
研修で知識を学んだ後も、管理職には、自分の現場で試し、振り返り、修正する時間が必要です。
Good Teamでは、研修だけでは扱いにくい一人ひとりの成長課題を見立て、管理職役割12ステップという型、本人の強みを活かしたリーダーシップの発揮、現場実践をつなぎながら、社外メンターとして伴走しています。
Good Teamの女性活躍推進プログラムでは、女性として働く中で生じる迷いと、一人の管理職としての成長課題の両方を扱います。
導入時にはプログラムを先に当てはめず、対象者の育成課題と、企業が実現したいことを確認したうえで支援内容を設計します。
女性管理職へのメンタリングに関する『よくある質問』
女性管理職のメンターは女性である必要がありますか?
必ずしも女性である必要はありません。
女性として働く中で経験したことについて、同性のメンターだからこそ話しやすい場合があります。
一方、男性が多い管理職層で働く女性にとって、異なる性別や経験を持つ管理職との対話が、新しい視点につながることもあります。
性別だけを条件にせず、本人が相談したいテーマや希望、メンターの管理職経験や対話力などを踏まえてマッチングすることが大切です。
ロールモデルを紹介することとメンタリングは同じですか?
同じではありません。
ロールモデルの経験を知ることは、キャリアや働き方を考える材料になります。
一方、メンタリングでは、ロールモデルの経験をそのまま正解として当てはめるのではなく、本人自身の希望や強み、現在の課題を整理します。
そのうえで、自分はどうしたいのか、管理職として次に何をするのかを考え、必要に応じて現場での実践につなげます。厚生労働省でも、「メンター制度」と「ロールモデル紹介」は女性活躍を支える異なる施策として整理されています。
研修を実施している場合でもメンタリングは必要ですか?
研修とメンタリングは、役割が異なります。
研修では、管理職に共通して必要な役割や知識、スキルを体系的に学ぶことができます。
一方、実際の職場では、本人の経験や強み、チームの状態、上司との関係などによって課題が異なります。
メンタリングでは、研修で学んだことも踏まえながら、「自分の場合は、今何を変える必要があるのか」を整理し、現場での実践と振り返りにつなげます。
研修の代わりではなく、学びを自分の現場で生かし、管理職としての成長につなげる方法の一つです。
女性管理職育成の課題を相談する
女性管理職向けのメンタリングは、登用人数を増やすためだけの施策ではありません。
登用前の不安を整理することもあれば、管理職になった後に役割転換を支えることもあります。経験を重ねた管理職が、これまでのやり方を見直す機会になることもあります。
大切なのは、最初から「女性管理職向けメンタリング」という施策を当てはめることではありません。
誰に、どのような育成課題があり、企業として何を実現したいのか。
まずはそこを整理することから始まります。
研修後の実践が続かない、社内メンターだけでは扱いにくい課題がある、女性ならではの支援と管理職育成をどのように組み合わせればよいか検討したいという人事・部門責任者の方は、管理職育成の課題を相談するからご相談ください。
著者情報
山田 聖子|MASAKO Yamada
株式会社Hitoiro 代表/管理職の社外メンターサービスGood Team代表

成人発達理論をベースに、管理職自身の実践を起点にしながら、一人ひとりの強みや経験を生かし、チームとして成果を出すための判断や関わり方を扱うリーダーシップ開発に取り組んでいる。社外メンタリングを通じて、これまで延べ1,000人以上の管理職の支援に携わってきた。



