女性管理職候補者の育成方法|候補者選定から始める管理職育成計画の5ステップ
- 山田 聖子|MASAKO Yamada

- 1 日前
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女性管理職率を高めたいと考えていても、いざ登用の段階になると、
✔︎ そもそも候補者が少ない
✔︎ 本人が前向きではない
✔︎ 上司も昇進後の姿を具体的に描けていない
といった壁にぶつかる企業は少なくありません。
そこで、たとえ女性社員向け研修を実施しても、昇進直前に管理職を打診しても、候補者層そのものが厚くならなければ、女性管理職は増えにくいままです。
女性管理職候補者の育成で見直したいのは、登用の瞬間ではありません。
候補者になる前から、本人と上司が対話を重ね、必要な経験を積みながら進めていく管理職育成計画です(内閣府男女共同参画局, 令和5年度)文献2。
実際、日本では就業者に占める女性の割合は2024年時点で45.5%ですが、管理的職業従事者に占める女性の割合は16.3%にとどまっています。
常用労働者100人以上の企業で見ると、女性比率は係長級24.4%、課長級15.9%、部長級9.8%で、役職が上がるほど女性が少なくなる構造が続いています。(内閣府男女共同参画局, 2025)文献1
さらに、東証プライム市場上場企業を対象とした内閣府の調査では、女性登用に関する課題として、
「女性役員候補者(部長等)が少ない」81.0%
「女性管理職(課長等)が少ない」72.8%
「女性管理職候補者(係長等)が少ない」54.4% [文献2]

が挙げられています。
登用時点だけでなく、その手前の母集団形成と育成設計が課題だと分かります。
加えて、2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の一般事業主には、女性管理職比率の情報公表が新たに義務づけられました。
男女間賃金差異の公表義務も、101人以上の事業主へ拡大されています。
これからは「女性活躍に取り組んでいます」と示すだけでなく、候補者形成から育成、登用までをどう設計しているかが、これまで以上に問われます(厚生労働省, 2026)文献4。
目次
女性管理職候補者の育成で「本人に意欲がない」と判断するのが早い理由
女性社員から「管理職にはなりたくない」と言われると、本人の昇進意欲の問題として捉えたくなります。
しかし、昇進意欲は性格だけで決まるものではありません。
JILPTの研究では、女性の管理職昇進に関わる要因として、責任ある仕事の配分、配置転換や職能経験の機会、上司からの励まし、身近なロールモデルの存在、そして自己効力感[※1]が整理されています。
つまり、「本人に意欲がない」と結論づける前に、意欲や自信が育つだけの経験と情報を、組織が渡せているかを確認する必要があります。(JILPT, 2020)[文献5]
ここで重要になるのが自己効力感です。
管理職に近い仕事を経験していない人ほど、自分がその役割を担えるイメージを持ちにくくなります。
逆に、難しい仕事をやり切った経験、身近な先輩の働き方を見た経験、上司から期待を伝えられた経験は、「自分にもできるかもしれない」という感覚を育てます。
女性管理職候補者の育成では、意思確認より前に、この自己効力感が育つ条件を整えられているかを見る必要があります。[文献5]
女性管理職候補者の育成で必要な5つのステップ
1.候補者に選ぶ前から、本人のキャリア意識を確認する
昇進候補者になってから初めて意思を確認するのでは遅いことがあります。
管理職になりたいかどうかを単発で聞くのではなく、その数年前から、どのような仕事を経験したいのか、何を実現したいのか、生活との両立で何を大切にしたいのかを対話し、本人のキャリア意識を確認していくことが大切です。
女性管理職候補者の育成は、候補者リストに入ってから始まるものではなく、キャリア対話の積み重ねから始まります。(内閣府男女共同参画局, 令和5年度)文献2
ここで注意したいのは、ライフステージや働き方への希望を、上司が推測で決めないことです。
「小さい子どもがいるから難しいだろう」「今は負荷をかけない方がよいだろう」と考える前に、本人の考えを確認する必要があります。
これは女性だけへの特別対応ではなく、性別に関係なく管理職候補者全体に必要な対話です。 (内閣府男女共同参画局, 令和3年度)文献3
2.上司が「なぜその人に管理職になってほしいのか」を具体的に伝える
女性管理職育成で見落とされがちなのが、上司側の説明責任です。
「そろそろ管理職を目指してほしい」と言うだけでは、本人には負荷の話に聞こえやすく、自分の何が評価されているのかも分かりません。
必要なのは、「あなたのこの強みを見ている」「この役割でこういう価値を発揮してほしい」と、なぜその人に管理職になってほしいのかを、本人に具体的に伝えることです。
日頃から見てきた行動や助けられたことを言葉にしながら期待を伝えることで、本人も、自分に期待されている役割を具体的に理解しやすくなります。
これは押しつけではなく、期待を正しく渡す行為です。
JILPTの論文でも、女性は上司の無意識の偏見や業務配分の男女差によって、責任ある仕事や難しい仕事を経験しにくく、そのことが自己効力感の低下につながると指摘されています。
逆にいえば、上司が適切に期待を言語化し、成長機会を渡すことができれば、候補者の見え方は大きく変わります。
3.昇進前に、管理職の仕事を知り、試す機会をつくる
管理職の仕事がよく分からないままでは、本人は現実的な判断ができません。
「忙しそう」「板挟みになりそう」といった漠然とした印象だけで、管理職を遠いものに感じてしまうからです。
そこで管理職育成計画には、昇進前から管理職に通じる経験を意図的に入れる必要があります。(JILPT, 2017)文献6
JILPTの研究では、対外的な折衝、事業立ち上げ、スタッフ管理など、管理職の仕事に通じる基幹的職務を経験することが、総合職女性の昇進希望を高めると示されています。

つまり、女性管理職候補者の育成では、研修受講だけでなく、小規模プロジェクトの責任者を任せる、後輩育成を担ってもらう、会議運営や方針説明を経験してもらうなど、仕事を通じた学びを計画に組み込むことが有効です。
ただ任せるだけではなく、経験した後に本人と振り返り、何ができたのか、次にどのような経験が必要なのかを一緒に整理することで、日々の仕事が管理職育成につながっていきます。
4.複数の社外ロールモデルと出会う
社内に女性管理職が少ない場合、ロールモデル不足を社内だけで解決しようとすると限界があります。
だからこそ、他社の女性管理職や異業種のリーダー、社外メンターなど、複数のロールモデルと出会う機会が重要になります。
一人の理想像を探すのではなく、「この考え方は参考になる」「この働き方は自分にも近い」と、複数のモデルから少しずつ取り入れられる状態の方が、本人にとって現実的な管理職像を描きやすくなります。
「管理職はこうあるべき」という一つの型を示すのではなく、さまざまな管理職の姿に触れながら、自分なりの役割の担い方を考えられるようにすることが大切です。
このような越境機会は、管理職になることを遠い世界の話ではなく、自分のキャリアの選択肢として考えるきっかけにもなります。(JILPT, 2020)[文献5](内閣府男女共同参画局, 令和5年度)[文献2]
Good Teamでは、管理職候補者が管理職の役割を知り、自分の強みやキャリアと結びつけながら、社外メンターや他社参加者との対話を通じて自分なりの意思を育む「管理職キャリア探求会」を実施しています。
5.候補者リストから「良かれと思って外す」運用をなくす
女性管理職候補者を増やせない企業では、育成以前に、候補者リストの作り方にバイアスが入り込んでいることがあります。
✔︎ 本人は望まないだろう
✔︎ 育児中だから難しいだろう
✔︎ 責任の重い仕事は負担だろう
こうした判断は善意に見えても、実際には候補者から外す理由として機能し、女性が成長機会を得る前に道を狭めてしまいます。(内閣府男女共同参画局, 令和3年度)文献3
こうした「良かれと思って外す」判断の背景には、「女性は管理職になりたがらないはずだ」という確証バイアス[※2]や、一部の好ましい印象がその人全体の評価に影響するハロー効果[※3]が潜んでいることがあります。
また、本人が自分の能力を過小評価するインポスター症候群[※4]によって、挑戦に慎重になる場合もあります。
候補者リストは、性別に関係なく、役割要件、実績、行動、今後の伸びしろを基準に作成し、本人への確認前に、上司の推測や本人の自己評価だけで外さないことが重要です。
仮に現時点で準備不足だと判断する場合も、外して終わりではなく、「何を経験すれば次の候補になれるか」を育成計画へ戻す運用に変える必要があります。
候補者リストを人材を選別するためだけのものではなく、今後の経験や支援を考える育成の入口として活用することが大切です。
女性管理職育成は、女性本人だけの問題ではなく、候補者を選ぶ組織側の仕組みの問題でもあります。
(内閣府男女共同参画局, 令和5年度)文献2
管理職育成計画に入れたい5つの項目
女性管理職候補者の育成を実効性あるものにするには、管理職育成計画の中身を曖昧にしないことが大切です。
具体的には、
本人のWillとキャリア上の希望
会社と上司が期待する管理職としての役割
昇進前に経験してもらう仕事と判断機会
上司・メンター・ロールモデルなどの支援体制
本人との対話と見直しのタイミング
この5つを入れておくと整理しやすくなります。
研修受講歴だけでなく、「どの仕事を任せ、何を学び、次に何を経験するか」まで具体化して初めて、管理職候補者育成は動き出します。
管理職育成計画は、会社が一方的に決めて渡すものではありません。
本人のWillと会社からの期待を対話によってすり合わせ、経験と振り返りを重ねながら更新していくことが大切です。
女性管理職候補者の育成は、本人が選べる状態をつくること
女性管理職を増やすことは、女性に昇進を強く勧めることではありません。
候補者リスト、上司との対話、管理職に近い仕事の経験、社外ロールモデルとの接点、個別の育成計画を一つの流れとして整えたうえで、本人が管理職を現実的な選択肢として選べる状態をつくることです。

Good Teamは、管理職一人ひとりが、自分らしいリーダーシップとマネジメントを見つけ、チームの成果へつなげていくことを支援する管理職の社外メンターサービスです。
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この記事を書いた人
山田 聖子|MASAKO Yamada
株式会社Hitoiro 代表/管理職の社外メンターサービスGood Team代表

成人発達理論をベースに、管理職自身の実践を起点にしながら、一人ひとりの強みや経験を生かし、チームとして成果を出すための判断や関わり方を扱うリーダーシップ開発に取り組んでいる。社外メンタリングを通じて、これまで延べ1,000人以上の管理職の支援に携わってきた。
女性管理職率向上のために「よくある質問」
女性管理職候補者の育成は、いつから始めるべきですか?
正式な昇進候補者として選ぶ前から始めるのが望ましいです。
本人が管理職の仕事を知り、必要な職務経験を積み、自分のキャリアとして考えるには時間が必要です。
本人が「管理職になりたくない」と言った場合は、どうすればよいですか?
無理に説得する前に、管理職の仕事内容、期待している理由、働き方、支援内容が十分に共有されたうえでの判断かを確認することが大切です。
女性向けの管理職研修だけで、女性管理職は増えますか?
研修だけでは十分ではありません。
管理職につながる仕事を任せること、上司が期待を言語化すること、候補者選定のバイアスを点検すること、ロールモデルやメンターとの接点をつくることを組み合わせて、初めて育成の実効性が高まります。(JILPT, 2017)文献6(内閣府男女共同参画局, 令和5年度)文献2
注釈
[※1] 自己効力感
ある結果を生み出すために必要な行動を、自分がうまく実行できるという認識。
成功体験、他者の観察、周囲からの励ましなどによって高まるとされます。
[※2] 確証バイアス
自分の思い込みに合う情報ばかりを集め、反証となる情報を見落としやすい認知傾向。
[※3] ハロー効果
一部の好ましい印象が、その人全体の評価にまで影響してしまう認知傾向。
[※4] インポスター症候群
十分な能力や実績があっても、自分を過小評価し、挑戦に慎重になりやすい心理状態。
参考文献
[文献1]
「令和7年版 男女共同参画白書 第1分野 第4節 経済分野」内閣府男女共同参画局2025年https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r07/zentai/html/honpen/b1_s01_04.html
[文献2]
「女性登用の加速化に向けた取組事例集」内閣府男女共同参画局令和5年度https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/pdf/yakuin_r05.pdf
[文献3]
「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)事例集」内閣府男女共同参画局令和3年度https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/seibetsu_r03/04.pdf
[文献4]
「男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務が拡大」厚生労働省2026年https://www.mhlw.go.jp/content/001668255.pdf
[文献5]
「女性の管理職昇進――それは企業の本気の人材育成あってこそ」労働政策研究・研修機構(JILPT)2020年https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/09/pdf/078-088.pdf
[文献6]
「総合職女性の昇進意欲に関わる職務経験―性別職務分離の問題性の考察―」労働政策研究・研修機構(JILPT)2017年https://www.jil.go.jp/institute/reports/2017/documents/0192_chapter4.pdf



